ストレートネックは上下の歯が噛み合った歯列のライン(咬合平面)が頸椎の湾曲と合っていないことで起きます。
このことは、歯並びと頸椎を関連付けた検査を行う医療機関がとても少ないので一般の方が知る機会はほとんどないでしょう。
そこで今回は、ストレートネックと歯並びの関係を症例を通して解説したいと思います。
下のレントゲン写真は、20代の女性で歯並びが悪く、過度な歯ぎしり食いしばりでストレートネックになった方の頸椎(黒線)で、正常な頸椎模型と比べると明らかに違いがわかります。
この患者さんは10代から慢性的な首や肩こりに悩まされていて頻繁に頭痛もあり薬を常用していました。
不調の原因はストレートネックであることが分かり、一般的な整体や上部頸椎カイロプラクティックを受け続けていましたがなかなか改善には至りませんでした。
何故ストレートネックになったのか?
原因を探ってみます。
先ずは、この方の歯型模型で確認してみます。
下の写真の右側赤線丸印付近が骨隆起で、歯ぎしり食いしばりの力は骨隆起の大きさと比例していますので、この方はとても強い力で噛んで歯ぎしりや食いしばりをしていることがわかります。
次に、正面からの口腔写真とレントゲンです。
歯のすり減りや奥歯の噛み合わせの高さに問題はなく、特に悪い歯並びには見えません。
歯列と頸椎の関係を調べるのに歯型を特殊な器具で分析して頸椎と歯列とを突き合わせて確認をします。
身体の正中に沿って体を左右に等分する面(正中矢状面)を知るには、癖や骨格の歪みに影響されない骨である口蓋骨の水平板を基準にする必要があります。
下の写真の赤線で囲った部分が口蓋骨の水平板という部分です。
この場所はレントゲンでは確認することができないので、分析するには歯型模型を用いて頭蓋骨と上顎歯列の位置関係を調査する必要があります。
上顎骨(頭蓋骨)に対する歯列位置の分析中
頭蓋骨に対する歯列の位置を分析中
上顎前歯から臼歯にかけての歯列位置(咬合平面)について、下の写真の様に歯列分析器(咬合器)に歯型をセットしてこの方にとって理想的な歯列の位置と実際の歯列の位置を割り出すと、写真の中央部にある緑色ライン上に歯が並ぶと理想的(理想咬合平面と言います)な整列状態であることが判明します。
ですが、この方の実際の歯列は写真の白線丸印部分を見るとわかるように、臼歯が緑色のラインより下方向に歯列(咬合平面)が飛び出していて、臼歯が理想的な位置よりも下方へ約3㎜下にあります。
本来あるべき理想的な咬合平面である緑ラインよりも下方に咬合平面がある事で、頸椎の歪みが発生してストレートネックになっていると推察できます。
この分析結果をレントゲン写真上に重ねて確認してみます。
写真の緑色ラインがこの方の理想的な咬合平面になります。
噛み合わせの力学的支点が第2頸椎歯突起(第1頸椎椎体下部)を通過していますので第2頸椎が安定し変形する要素がありません。
ですが、実際は写真の赤色ラインがこの方の咬合平面を表しているので、このラインの延長線上にできる噛み合わせの力学的支点が第2頸椎下部を通過します。
この歯列は第2頸椎を後方に移動させる力を発生させてしまいストレートネックになる要因です。
現状の歯列で行う歯ぎしり、食いしばりの強い力によって頸椎に歪みを引き起こし、ストレートネックとなり、慢性的な首こり、肩こりの不調を作っていた事が分かります。
この様な方の改善方法は、噛み合わせの支点を前歯に作り、臼歯が噛まない形状にして設計した当院オリジナルマウスピースを(下の写真)装着して就寝する事でストレートネックの進行を予防し、症状の改善を図ることができ、かつ整体での頸椎矯正での効果も上げます。
この患者様はマウスピースの装着と月に2~3回の整体を受けていただき、2~3ヶ月で改善されました。
このように、マウスピースと整体だけでも改善は可能ですが、奥歯の補綴治療を希望された場合でも、提携歯科医院と当社歯科技工所(歯科顎センター)で理想的な咬合平面に設定することで、頸椎のストレートネックを改善することが可能です。
歯科についてのご相談のみでも可能ですので、お気軽にご来院ください。